中間圏における3次元風速のスペクトル特性

中間圏の東西風と東西運動量の鉛直フラックスの周波数スペクトル。中間圏の観測は日射があり電離する日中のみ可能です。極域では夏に白夜となるため、50日以上の連続観測が可能で、PANSYによって世界で初めての中間圏では広帯域スペクトルが得られました。理論的に予想されていた高周波数の重力波ではなく、低周波数の重力波が運動量輸送を担うことが分かりました。異なる色は異なる年の結果を示しています。

引用論文:Sato et al., JGR, 2017

近慣性周期を含む広帯域な大気重力波のスペクトル特性

PANSYレーダーで観測された対流圏・成層圏の各高度での東西風と東西運動量の鉛直フラックスの周波数スペクトルの1年平均。中間圏と異なり、対流圏・成層圏は常に連続観測が可能です。成層圏には(対流圏界面高度である約10㎞以上)慣性周期(フーコーの振り子の周期の半分に対応する約13時間、赤破線)に顕著なピークが見られます。このピークは負の運動量フラックスを伴っていることがわかります。

引用論文:Minamihara et al., JGR, 2018

レーダーエコーのスペクトル幅から推定された乱流エネルギー消散率

非乱流過程によるビームブロードニングの効果を取り除く新しいアルゴリズムを開発し、乱流エネルギー消散率を受信スペクトル幅から推定しました。PANSYレーダーによる乱流パラメターの推定は、南極域の対流圏・成層圏・中間圏において初めてのものです。

引用論文:Kohma et al., JGR, 2020

南極域初の非干渉性散乱レーダー観測を支える適応的信号処理技術

図1. PANSYレーダーにより得られた南極域初の電子密度の高度プロファイル
図2. 高度プロファイルの時系列。下段はFAIエコーの時間・高度分布。(赤枠内は抑圧結果の一例)

南極昭和基地大型大気レーダー(PANSYレーダー)は、 2015年に南極域で初めて電離圏の非干渉性散乱レーダー観測による電子密度の測定に成功しました。(図1)
2017年には地磁気の磁力線に沿った電子密度の不均一 (Field Aligned Irregularity; FAI) による干渉下においても電子密度を測定可能とする、適応的信号処理技術を開発しました。(図2)

引用論文:Hashimoto et al., J. Atmos. Oceanic Technol., 2019