昭和基地の大気観測

大型大気レーダーが充実させる南極の大気観測態勢

昭和基地には、従来より高度な観測機器が数多く整備されており、極域大気観測の重要な拠点となっていました。これらの観測機器にPANSY計画による大型大気レーダーや各種の電波・光学観測装置が加わり、世界的に見ても例外的に強力な観測研究態勢を実現しています。

気球観測

対流圏と成層圏の温度と風、オゾンを観測

ゴム気球を用いてゾンデと呼ばれる観測機を打ち上げて、上空の風や温度、オゾンを測る観測が定期的に行われています。このデータは世界の主要気象機関にリアルタイムで送られ、世界の気象解析に役立っています。また、研究目的で薄いプラスチックフィルムでできた大気球を用いての大気サンプリングや、成層圏上部のオゾン観測なども行われています。これらの観測は高度分解能は良いのですが、気象条件に左右され、連続観測には困難が伴います。

MFレーダー観測

2.4MHzの中波で高度60-120kmの風を観測

太陽光エネルギーによりわずかに電離した大気や、流星が残す電離気体をターゲットとしてその動き(風)を追い、広い高度範囲の風速観測を行っています。

大気光観測

大気光観測による大気波動の研究

高度80~100km付近および250km付近にある窒素や酸素などの分子・原子は、太陽光エネルギーなどに励起されて光を発します。大気光または夜光と呼ばれるこの光の強さは、この領域を通過する大気波動に伴う温度や密度のゆらぎによって変化し、波状の模様として大気波動を映し出します。これを明るい光学系と高感度CCDを用いた全天イメージャーで捉えて大気波動の水平構造を観測するとともに、OH分子からの大気光については分光観測をして大気の温度測定を実施します。

ミリ波分光放射計観測

成層圏・中間圏の組成を観測

大気中のオゾンなどからのミリ波帯 (200-265GHz) の放射を測定し、高度15-70kmのオゾン、NOx、COの分布や総量を観測します。